あの日、あの夜、プールサイドで
「この道、暗いな。」
こんな道を毎日通ってるのかと思うと、ゾッとする。
「そうなんです。
だから日が落ちると怖くって……いつも近くまで迎えに来てもらってます。」
「え?誰に??」
「ジュンくんとか…後は男の職員さんかな。園長先生は年頃の女の子には一人で夜道を歩いちゃいけない、って口すっぱく言ってます。だから一人で夜道を帰ることになったら、愛児園に電話してお迎えを待つことになってるんです。」
ジュン
その名前はキラの口からも聞いたことがある。確かキラの一つ下で、同じ部屋で暮らす弟分であいつの親友なんだよな?
確か名前は木村淳一。
そうか……
当たり前だけど真彩とその子も仲良いんだな。
なんだか不思議な安堵を感じて
「そっか。それなら安心。」
「え??」
「だって護衛の男がいるなら、変なおっさんにイタズラされる心配がないだろ??…………って、真彩から見れば俺も立派なオッサンか。」
18の子から見れば26の男なんて、しっかり立派なオッサンだもんな。
自分の言葉にクスッと笑って口元を緩めると
「おっさんじゃない…です。」
「え??」
「先生はオッサンなんかじゃ…ないです。大人でスマートな男の人だと思います。」
蚊の鳴くような声で。
小さく真彩は俺の背中に呟いた。