あの日、あの夜、プールサイドで
はーー。この小悪魔め。
「真彩。」
「はい。」
「その気も無い奴にそういうこと言うな。」
「……え??」
「その気もないくせに、裏切る勇気も出ないくせに期待だけ持たせるなんて、タチが悪いぞ。」
多分…さ??
真彩はそんな気なく言ってるんだろうけど・・・。今の俺にはちと重い。
「キラが好きならよそ見はするな。隙は見せるな。ほかの男に甘えるな。お前が隙をみせるのも甘えるのもキラだけだ。それはな??男と女が付き合う上での最低限のルールだぞ??」
真彩が都合のいい女になってくれるなら、それはそれ。
ヤッて終わりでいいのなら。
二股かけてでも俺と付き合ってくれるなら話は別だけど、その覚悟もないくせに甘えたことを言う真彩。いつもならそんな彼女のわがままを可愛いと思い、受け入れてしまう俺だけど・・今日だけは許せなかった。
「気がある素振りをするのは好きな人の前だけにしろ。あっちにもこっちにもいい顔する尻軽女は、真彩には似合わない。」
これで真彩とはお別れだ。
キラが大事だと思う俺と真彩は、キラを決して裏切れない。お互いに傷を舐め合って、いい人ぶって別れたら、それこそお互い前に進めない。
お互いの手を取り合えない以上、俺たちに待っているのは別れしかない。綺麗になんて別れたら余計にお互いを忘れられなくなってしまう。
真彩も俺も
お互いの手を離す勇気を持たなきゃならない。