あの日、あの夜、プールサイドで
◆After that
◆ ◆ ◆ ◆
そして約束の日曜日。
俺は重い腰を上げながら、ジーンズに中袖のTシャツを着て、その上にコートを羽織って外に出た。
二月の風は恐ろしく冷たい。
昼間だというのに頬に吹き付ける風はナイフのように鋭くて、指先は凍えるほどに冷たくさせる。
「うへー、寒い!」
車に乗り込んでハンドルを握ると、ハンドルが氷になったんじゃないかと思うくらいに冷たくて、俺を心の底からがっかりさせる。
真彩に会っちまったらどうすればいいんだ。
婦長さんにはお世話になった。
オヤジも俺も心の底から感謝している。
だけど……俺は真彩をまだ忘れられていない。
優しい笑顔
柔らかな、あの雰囲気
甘ったるい、あの喋り方
記憶の中で思い出すだけでも、俺の心をチクチクさせる真彩。
――はぁ…また逆戻りか……。
せっかく忘れられそうだったのに、また振り出しに戻るのは辛いなぁ。
俺は車のエンジンをブウンとつけるとハァと大きくため息を吐いた。
――なるべく真彩に会わないように、サッサとお茶して帰ってしまおう。
とにかく中庭はデンジャーゾーンだ。
中庭には目を向けず、さっさと用事だけ済ませて帰るんだ。