あの日、あの夜、プールサイドで


「…え??」


驚いて振り返ると


「人はね?みんな望まれて生まれてくるの。どんなことがあっても母は母。子どもを心から憎む親なんていないものよ??」


静枝さんはそう言って静かに笑う。




「光太郎。」


「…なに?」


「私はね。あなたと出会えてとても幸せですよ?あなたと家族になれて、あなたのお母さんになれてとても幸せ。」



――静枝…さん……。



「覚えておいてね?光太郎。
私はあなたを愛していますよ。義務でもなく同情でもなく、私はあなたを心から愛していますよ?」



静枝さんはニッコリと笑うと
俺の肩に手を伸ばして、俺の肩をギュッと抱き寄せる。


肩越しに感じる
静枝さんの温かさ。


昔と変わらない、静枝さんの優しい匂い。


お日様のにおい。




静枝さんの変わらない香りに包まれながら
静枝さんは俺の頭にコンっと自分の額を寄せる。




そして俺をさらに強い力で抱きしめると


「寧々ちゃんを…お母さんにお返ししましょう。彼女がいるべき場所にちゃんと返してあげましょう。」


小さくそう呟く。


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