あの日、あの夜、プールサイドで
ーーあぁ、もうダメだ!
頭の片隅にキラが写った。月原!そう言って笑うアイツの顔は確かにあった。
だけど…
気づけば俺は真彩の小さな体に手を回して、あいつのアゴをクイッと引き上げると、ただひたすらにキスをした。
「ん…、フゥっ…!」
玄関の中に引き寄せると、玄関の重い扉がガシャンと閉まる。閉まった鉄の重い扉に真彩の体を押し付けると
「真彩…、真彩…!」
俺は何度も何度も角度を変えてあいつの唇に何度も何度もキスをした。
ただ触れるだけのキスはいつしか、彼女の唇をついばむキスに変わっていった。それでも満足できない俺たちは、お互いの舌を絡め合わせる。
「あ、ふ…っ。」
甘い水音が部屋の中にこだまする。
真彩の甘い声もこだまする。
そこにはキラに対する罪悪感なんて一欠片もなかった。
彼女が欲しい。
その気持ちしかなかった。
真彩の全部が欲しい。
キラがどうだとか、年齢の差とか、自分の職業だとか、そんなものはどうでもよくて…。ただ、欲しかった。
彼女の全部を知りたかった。
彼女の全部を愛したかった。
心だけじゃなく、体の奥まで。
「真彩…、俺に応えて?」
「…え?」
「俺がしてるのと同じこと、俺にもしてよ…。」
まるで中学男子のような荒々しさで彼女の口内を犯す、俺。不器用な舌の動きで彼女は俺に応えてくれているけど、正直それだけじゃ物足りない。
もっともっと欲しかった。
俺が彼女を求めてるのと同じくらい、彼女にも俺を求めて欲しかった。
明日…地球がなくなったとしても、今日が人生最後の日であろうとも、後悔しないぐらい、濃厚で激しい、忘れられないキスがしたかった。