あの日、あの夜、プールサイドで
ーーひどいヤツだよな。
キラに対して誠実でいたいと、あいつのために真彩を諦めようと思っていたのに…。
俺は欲望に負けている。
真彩の涙に全ての理性が壊されて、残っているのは『真彩が欲しい』という本能だけ。動物のように真彩を求める自分だけ。
「こ、こう??」
「うん、上手。
もっと奥まで絡めてみて?」
真彩とのキスで、口の中も立派な性感帯なのだと初めて気づく。
たぎる欲望はとどまることを知らなくて、俺はもっと強い快感が欲しくてあいつの胸に手を伸ばす。
真彩の制服の中に手を忍ばせると、あいつの温かくて柔らかいモノに手が当たる。手のひらにゆっくりと力を入れると
「…!!」
驚いたように目を見開いた真彩と、フッと目が合う。
ーーヤバい。暴走しすぎた。
俺…真彩に何をしようとした…?!
一瞬、我に返って、あいつの制服から手を引いて勇気を持ってあいつの体を自分から引き離すと
「悪い。暴走しすぎた。」
そう言って、俺は気分を取り直してリビングへと足を進める。
ーー落ち着け…。落ち着け、俺。
ダイニングテーブルに両手をついて、ハァとため息を吐いた後
「ごめん。
今日は真彩も学校だろう?
ちょうど俺も仕事に行くとこだから…ついでに送って行ってやるよ。」
今までの甘い時間をなかったもののように扱って。俺たちの間には何にもやましいことなんてないんだ、というフリをして真彩に笑いかける。
これでいいんだ。
自分で自分に言い聞かせて、近くにあった車のキーに手を伸ばすと
「学校…行かない。」
「…は?」
「私…ここで待ってる。」
真彩は俯いたまんま、こんなわけのわからない一言を口にする。