あの日、あの夜、プールサイドで
そんな小悪魔な、真彩の誘いに乗って。現実から逃れるように、一心不乱に抱き合って。一眠りして目を覚ますと、窓の外からはオレンジ色の光が差し込む時間になっていた。
「4時か…。」
俺の隣で小さくうずくまって、スヤスヤと静かな寝息をたてる真彩の頭をヨシヨシ撫でると真彩がゆっくりと瞼を上げた。
「ん…、今何時…??」
「4時だよ。」
「え?もう??」
「うん、残念ながらタイムリミットだなぁ。」
首を傾げて俺を見つめる真彩のかわいい唇にチュッと口づけ
「真彩、着替えな。」
「え??」
「あんまり遅くなると園長先生も心配するだろ?送って行くよ。」
そう言って彼女の髪をひと撫でしたあと、俺は勢いよくベッドから起き上がった。
ベッドの周りに散らかったまんまの衣類。それらを手にとって一人で黙々と着替えていると
「先生??」
真彩が不安そうな声を上げて、ゆっくりと上体を起こす。
「私…コウちゃんとちゃんとお別れするから。」
「え??」
「私…先生の恋人になりたい。ちゃんとみんなに認められる形で一緒にいたい…。だから、、、ちょっとだけ待ってて欲しいの…。」
上半身を布団で隠して。布団の端をギュッとつかむと、苦しそうに真彩は俺に訴えた。
彼女の言う“お別れ”ってヤツはキラにとってみれば裏切り行為だ。長年付き合ってきた、家族同然のキラをギタンギタンに傷つける。それが“別れ”。
その意味をわかっているからこそ…真彩はこんなに苦しい表情をしてるんだろう。
そんな彼女を勇気づけたくて、少しでも気持ちを軽くさせたくて
「俺が言おうか??」
「…え??」
「俺がキラに言えば丸く収まるんじゃないのか?“真彩を寝とった。ボヤボヤして安心しきってたオマエが悪い。”って言えば…真彩は悪者にはならないぞ??」
そんな提案を持ちかけた。