あの日、あの夜、プールサイドで
夕焼けの差し込む部屋の中で、黙ったまんま見つめ合う二人。
瞬き一つせず彼女を見つめていると真彩はフッと視線をずらしてフルフルと首を振る。
「ううん、いい。
ちゃんと自分で言う。最後の最後で嘘ついたら…ダメでしょ?」
「真彩…。」
「欲しがったのは私なんだもん。先生はちゃんと距離を取ってくれてたのに、それを我慢できなかったのは私なの。ズルいのは私なんだよ先生。それなのに…最後の最後で逃げたりしたら、私は一生自分を許せなくなる。」
窓の外に広がるオレンジ色の街に視線をずらすと
「苦しいけど…これ以上自分を嫌いになりたくないよ。自分の気持ちに正直に生きていきたい…。」
真彩はきっぱりとそう言い切った。
キラを裏切った俺たち。
許されるはずなんてない。
祝福されるはずもない。
キラを愛しているくせに裏切ろうとする俺たちは、ひどく矛盾していて、ひどく醜い。
そんな自分に吐き気をもよおす一方で目の前にいるこの子を離したくないとおもってるんだから、俺の頭はどうかしている。
ーー後悔はしてない。
真彩を抱いたこと、気持ちを打ち明けあったことに対しては1ミリの後悔はない。
だけど…
キラに対してこれ以上ない裏切りをしているんだと思うと罪悪感で押しつぶされそうになる。
ーー矛盾してるな…。
重い身体を無理やり動かしてTシャツを着て、ジャケットを羽織って。ベッドにいる真彩に向き合うと彼女の頭をクシャッと撫でて
「じゃあ…リビングで待ってるから準備が出来たらおいで?」
そう言って、真彩の柔らかな唇にそっとそっとキスをする。
オレンジ色に染まる頬を寄せて、映画のワンシーンのような切ないキスを真彩に贈ると
「ただ…好きなだけなのにね。」
「え??」
「ただ好きなだけなのに…どうしてこんなに苦しいんだろうね。」
そう言って、真彩は大きな瞳をウルウルと潤ませた。