あの日、あの夜、プールサイドで
真彩は車を降りて、ドアを閉めて。そのまま愛児園に戻るのかと思っていたらぐるっと回って俺の運転席側のドアまで走ってきた。
ーーえ?なんで??
真彩の予想外の行動に驚いて、窓を開けると
「先生、私の気持ちに嘘偽りは何一つないから。」
「…うん。」
「時間はかかると思うし、めんどくさいって思うかもしれないけど…待ってて欲しいの。私、ちゃんとするから。ちゃんと先生の彼女になれるように頑張るから…お願い、待ってて…。」
真彩は泣きそうな顔をして俺にぺこりと頭を下げる。
あぁ、だめだ。
嬉しくて死にそうだ。
俺は彼女の右腕を取って自分の方に引き寄せると
「当たり前…でしょ。
待つよ。いつまででも待つよ。」
近づく真彩の唇に触れるだけのキスをした。
好きだ。
好きすぎて、それしかない。
この子の全てがいじらしい。
こんな風にひたむきに、一生懸命に気持ちをぶつけられたコトが今までの人生の中であっただろうか。
諦めないで欲しい、と言いたいのはどちらかといえば俺の方なのに、こんな風にまっすぐ気持ちをぶつけてくれた真彩が愛しかった。真彩のおかげで心底幸せな気持ちになった俺がいる。
気持ちを確かめ合うようにキスをして、ゆっくりと体を離した後、何かを察した真彩がフッと後ろを振り向く。
そこにいたのは…
「こ、コウちゃん…。」
ひどく傷ついた目をして俺を睨みつけるキラだった。