あの日、あの夜、プールサイドで


◆◆ ◆◆ ◆◆


その後のことは…正直あんまり言いたくない。



殴られればスッキリするのかと思ってキラを挑発してみたけれど、殴られたら殴られた分だけ…心が痛んだ。




助けて。

俺を裏切らないで。

真彩を俺から奪わないで。




殴られるたび、アイツに罵られるたび、アイツの悲鳴が聞こえるようで…苦しかった。




あいつを大切に思っているのも真実。アイツを支えてやりたいと思ったことに嘘はない。


自分の身体以外、何も持たないアイツに何か自信を持てるものを作ってやりたくて、競泳の世界に引き込んだのは、他の誰でもない、この俺だ。



大切な教え子

それ以上に深く繋がっていると確信していたキラを裏切ったことに罪悪感が生まれないはずがない。




キラは罵りながら、叫んでた。



『どうして自分を裏切るんだ。』

『信じていたのに。信頼していたのに、どうして自分を裏切るんだ。』




その悲鳴が聞こえていたのに…俺は聞かないふりをした。





真彩を奪われたくない。






その気持ちは俺も同じだったから。


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