あの日、あの夜、プールサイドで


自分に正直でいた結果がこれか…。


真彩を離したくないと思ってた。
そのためなら、誰を傷つけても仕方ないと腹をくくっていたはずなのに…もう早くも後悔しそうだ。



心の中で盛大なため息を吐きながら、目の前の真彩をなだめていると


「月原先生、真彩ちゃん。
少しお茶しましょうか。」


園長先生が俺たちに声をかけた。



吉良静枝。
この光の子愛児園の園長であり、吉良の養母。


真彩の育ての親でもあるけれど、吉良の事は本当の母親のように可愛がっている彼女の申し出に、少し暗い感情を持ってしまったのは俺だけではないらしく、真彩も体を硬くしたまま俺の手を握りしめていた。




彼女の申し出にウンともスンとも言わない俺たち。

そんな俺たちを見てクスッと笑うと


「大丈夫。お説教はしませんよ。」

「え??」

「外は寒いし、先生もその傷じゃ可哀想です。少し中であったまりませんか??」


園長先生は柔らかな笑顔で微笑んだ。



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