あの日、あの夜、プールサイドで
園長先生の口から飛び出した意外な言葉に驚いて、思わず動きを止めると
「今に心中しそうな二人をこの寒空の中に放って置くわけにはいきませんからね。」
「園長先生…。」
「大丈夫。誤解してるかもしれないけれどね?光太郎は私にとって大切な息子だけれど…真彩ちゃん。あなたも私にとっては大切な娘に変わりはないんですよ??」
その笑顔に少し緊張が解けたのは俺だけではないらしく、俺を掴んでいた真彩の指先からも力が抜ける。
「大丈夫。誰もあなたを責めたりしません。ね??三人で中に入りましょう。」
大きな人だ。
彼女の澄み切った笑顔を見て、心底そう思った。
真彩と目を合わせてコクンと小さく頷いた後
「じゃあ…お言葉に甘えてお邪魔しても構いませんか??」
ゆっくり立ち上がりながら、そのお誘いを受けると
「良かった。
この間、美味しい紅茶を頂いたのよ。三人で一緒に飲みましょう。」
園長先生は柔らかに微笑んで、俺たちを園長室に招き入れてくれた。