あの日、あの夜、プールサイドで
「え…?」
「こんなおばあちゃんがお世話をするより、可愛い真彩ちゃんがお世話をしてくれた方が先生だって嬉しいでしょう??」
そう言って、茶目っ気たっぷりに園長先生が微笑む。
その言葉に『そんなことありません。』と言おうとした時
「それに…その傷は二人の恋を貫くために出来てしまった傷でしょう??そんな素敵な傷に、私が触れてはいけない気がしてしまいますからね。真彩ちゃん、よろしくお願いします。」
園長先生の口からはこんな思いもしない言葉が飛び出した。
どういうことだ??
この人、本気でそう思ってるのか??
普通だったら。
普通だったら自分の息子をコケにされて、傷つけられた相手に、こんな風に優しくできるはずがないと思う。
俺だったらイヤだ。
こんな風に同じ部屋にいることすら、嫌悪感を感じるはずだ。
園長先生の口から飛び出した言葉の真意を見つけられずに口ごもっていると
「愛は与え合うもの。
恋は…奪い合うものですから。」
園長先生はティーカップを取り出して、その中に紅茶をそそぎいれた。