あの日、あの夜、プールサイドで
キラの求めた人…
それはきっと最初は産みの母親だった。
そして次は愛してやまない大切な妹、寧々ちゃん。
そして真彩。
それに俺……。
「すみません。」
今更ながら、自分の犯した罪に苦しくなる。
こうなることはわかっていたはずなのに…園長先生に優しくされればされるほど、罪の意識に苛まれる。
アイツはこれから人を信じることができるんだろうか。
愛することができるんだろうか。
俺のことは憎んでいい。
許さなくていい。
憎み続けてくれればいいと思う。それでキラの気持ちが少しでも晴れるなら…それでいい。
だけどアイツの気持ちを想うと、これからのアイツの未来を思うと、胸が痛んだ。
何も言えずに拳を握りしめていると、
「先生…。」
心配そうな顔をして真彩が俺の顔を覗き込む。
彼女の小さな手のひらに手を伸ばしてギュッと握ると
「月原先生。罪の重さを感じるなら、幸せになってください。」
「え??」
驚いて顔を上げると
「それが何よりの罪ほろぼしです。光太郎が羨むくらい、妬むくらい幸せになってください。そうでなければ…傷ついた光太郎が可哀想です。」
「園長先生…。」
「奪った者の痛みは奪った者にしかわかりません。それに奪われた者の痛みも奪われた者にしかわかりません。光太郎は苦しいでしょう。きっとこれからもがき続ける日々が続くでしょう。
だけどね?先生。
だからと言ってあなた達も不幸になる必要はないんです。」
少し傷ついた顔をして。それでも柔らかに園長先生は俺に向かって笑いかけてくれた。