あの日、あの夜、プールサイドで
アイツが荒れてんのは俺のせいなのかな…とか、俺が真彩を奪わなければキラキラしたあのお日様みたいな笑顔はいまだ健在で、明るい光の中をアイツは歩んでいけたのかな…とか思ったり…する。
もちろんそんなことは真彩にも園長先生にも言えなくて、ずっと自分の中でその気持ちを押さえ込んでいたんだけど…
「そういえばどうなの?
その後、生徒くんとは。」
久しぶりに訪れたホスピス。
いつものようにあの強引な婦長さんに呼び出され、連れ去られて中庭で二人でカフェオレを飲んでいると、突然彼女はこんな爆弾を俺に放り込んできた。
「荒れてる…みたいですね。
どうもあんまりいい噂を聞かなくて…。」
ハァとため息を吐くと
「そうよね。その年頃の子にとっては恋愛って一大事だものねぇ。荒れて当然なんでしょうね。」
婦長さんは小さくため息を吐いた。
真っ青な空の中、二人で無言でカフェオレを飲んでいると
「もうすぐ…夏ね。」
「そうですね。」
「夏になると…いつもあの人を思い出すのよ。」
そう言って
婦長さんは空を見上げる。
婦長さんの言うあの人、とはきっと以前聞いたずいぶん年下の恋人のことだろう。
若くして亡くなってしまった婦長さんの大切な男性。
確か…
婦長さんの恋人も競泳選手だ、って言ってたな。
なんていう名前なんだろう。
もしかしたら昔の記事とかを探せば顔写真も見つかるかもしれない。
そう思って話しかけようとした時
「キラキラのダイヤモンド。」
ーーえ…??
婦長さんは突然そんな言葉を口にする。