あの日、あの夜、プールサイドで
左手には寧々のためのプリン代の入った、小さな小銭入れ。反対には柔らかい真彩の手。
その二つを握りしめながら
「俺……、真彩がその気なら遠慮なんてするつもりないよ?」
俺はアイツの目をじっと見つめる。
真彩は誰よりも大切で
誰よりも好きだけれど
彼女は俺の大切な家族の一人。
光の子愛児園で暮らす、大切な兄弟の一人。
だから、こんな風に打ち明ける気はなかった。
いつか俺が大人になって、この愛児園から卒業する日が来たら真彩に言おうと思ってたんだ。
「俺と本当の家族になろう」って。
毎日一緒にいるのに
フラれたら気まずいし、第一真彩と変な空気になりたくない。
そう思って我慢してたのに……
そっちがその気なら俺だってもう我慢なんてしないよ??
俺は繋いだ彼女の手を自分の方に強引に引き寄せると
「俺も好き。」
「……え??」
「俺も真彩が大好き。」
そう言って、小さな彼女の肩に手を回して優しく優しく抱きしめる。