あの日、あの夜、プールサイドで
◇競泳やってみないか?
真彩と俺が恋人同士になって半年後
俺は中学2年生
真彩は高校へと進学を遂げていた。
寧々は保育園の年長さん。
来年は小学生になるんだ、と喜んでいる。
桜が散り
爽やかな空が広がる五月
「吉良、お前水泳部に入らないか??」
俺は担任の先生に職員室に呼ばれ、こんな提案を受けていた。
「え?水泳?」
「そう。お前運動神経もダントツだし、体は柔らかいし、筋肉も柔らかい。絶対にいい選手に育つと思うんだよなぁ……。」
当時の俺の担任は体育の先生で競泳を専門とする水泳部の顧問。
担任の名前は月原和也・22歳。
なかなかのイケメンで女子達に大人気。
いっつもジャージで校内をうろついてるんだけど、ミーハーな女子曰く“それがいい”んだそうだ。
うちの水泳部は公立校にはありがちの夏場だけ活動する部活。
(プールが屋外にあり、温水じゃない為。)
そんなこんなで部員も少なくて、選手不足に悩んでるってボヤいてたけど……ここに目をつけたか。
あまりにも近場で選手不足を補おうとする担任に苦笑しながら
「うーん、興味はあるけど無理かな。」
「どうしてだよ。理由を言え!」
「だって、俺、夏休みは新聞配達のバイトする予定だから。」
あっさりと申し出をお断りする。