あの日、あの夜、プールサイドで
光の子愛児園という児童養護施設で寝起きする、俺。
立場は園長である静枝さんの息子だけど、待遇は他の兄弟たちと全く一緒。
静枝さんが俺たちにくれるお小遣いは月2000円。
もちろん貰えるだけでもありがたいけど、正直それだけじゃ欲しいものが何も買えないのも事実。
服もほしいし
音楽だってダウンロードしたい
雑誌だってほしいし
寧々のプリン代も真彩とのデート代もそれっぽっちじゃ賄(マカナ)えない。
だから施設の兄弟たちは高校生になったら、みんなバイトに精を出す。
特に人気なのが新聞配達。
早朝に仕事して、しっかり学校も行けて、ちゃんと稼げる、とってもおいしい仕事なのだ。
中学生から出来る、数少ないバイト
それに手を出すのはあのときの俺からすれば当たり前といえる状況で
「こっちは生活かかってるからさー。ごめんね、先生。」
あっさりと申し出をお断りすると
「俺はお前はSGの藤堂みたいにいい選手になれると思うんだけどなぁ……」
残念そうな表情を浮かべながら
担任はポツリと呟く。