あの日、あの夜、プールサイドで
藤堂??
誰だそれ。
聞き覚えのない名前に首を捻っていると
「藤堂響弥。
お前と同じ中学二年生で去年の全日本中学競泳大会の覇者で、ジュニアオリンピックの日本代表。SGスイミングスクールっていう東京の名門クラブに在籍してる競泳界のスターだな。」
そう言って、担任は散らかった机の上から一冊の水泳専門誌を取り出してパラパラとめくり、ある記事を指差す。
そこには去年の全中の記事がつらつらと書かれてあって、各種目の優勝者が小さな写真と共に載っている。
へぇ……
本当にコイツと俺って同年代なんだ……
『中学一年生ながら圧倒的な強さで優勝を遂げた藤堂響弥。12才ながらその圧巻の泳ぎには大人たちも脱帽である。彼は必ずや次世代を担う、日本のエースになるであろう。』
金色のメダルを首にさげて、不適な笑みを浮かべる藤堂。
“勝って当然”
そう言いたげなその笑顔に
「絶対、コイツ性格悪いだろ……」
そう確信をしたのも事実。