あの日、あの夜、プールサイドで


「意味わかんないコト言うなよ!」


俺はイラつきながら、頭に置かれたまんまの月原の手を振り払う。




人生そんなに甘くない。
このご時世に俺は児童養護施設育ち。


ただでさえ人生にハンデ負ってんのに、あれもこれも手を広げたら結局何にも手に入らないじゃないか。



俺が望むのは堅実な生活。





愛児園で生活できるのは高校三年生まで。
高校を卒業したらみんな就職して一人立ちしていく。




それは静江さんが決めたことではないけれど“保護は18歳まで”と国の規定で決まっている。



もちろん優しい静枝さんは

「18歳以降も愛児園にいていいわよ?」

と言うけれど、ほぼ全員の兄弟たちが18歳を境に愛児園を巣立っていくのも事実。



高校三年生まで俺はあと4年
真彩に至ってはあと2年とちょっとしかない。




あと4年でできることなんて限られてる。
あと4年で何ができるか。
俺は将来何になりたいのか。



俺は中学に上がったころから真剣に考えてきた。




それで決めた職業は“公務員”




俺は堅実に高3になったら公務員試験を受けるつもりだから、勉強しなきゃなんないんだよ。


高卒で公務員って、このご時世狭き門なんだからな!!



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