あの日、あの夜、プールサイドで
「堅実な生活、それもいいけどね。
一つ抜きん出た能力があれば、人間誰だって大金持ちになれるんだぜ??」
誰よりも冷たい。
絶望を湛えた冷酷な目をしながら月原は笑う。
――な、なんだよ、この目。
俺と同じ
いや、それ以上に冷たい、暗い影を持つ視線に一瞬怯む。
「不幸話ついでに言うとな。
俺だってオマエに負けてねぇぐらいのドン底だったぞ??」
「…え…??」
「ま、ココで言う話じゃねぇから詳しくは割愛するけどな。俺もどん底貧乏まっしぐらだったけど、水泳があったからこういう職業につけた。俺より才能のあるヤツはもっともっと稼いでる。」
俺と同じ
絶望を知ってる目
その瞳をたたえた月原はゆっくりと雑誌を戻す。
「オマエのカラダからは金の匂いがすんだよ。」
「は?金の匂い?」
「…そっ。才能あるアスリートのいい匂い。」