あの日、あの夜、プールサイドで
◇キラキラのダイヤモンド
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「えぇ!?競泳!?」
「そっ。担任の月原がさ?やってみないかって……。」
その日の夕食時
俺は真彩と隣同士で座りながら、今日のコトのあらましを語り始める。
「えー!?何!?
コウちゃん、スポーツマンになんの!!?」
その話に誰よりも食いついたのは隣にいた真彩ではなく、同じテーブルで食事を取っていた一つ年下のジュン。
ジュンの本名は木村淳一(キムラジュンイチ)
中学一年で俺と同じ部屋で寝起きを共にするルームメイト。
「まだ決まってないよ。
でも、ちょっと揺れては…いる。」
普通にいい先生だと思っていた、月原のあの態度。絶望を知ってるものだけが持つ、あの暗い瞳
それにはびっくりだったけどアイツが言った一言が気になってたんだ。
“競泳はどん底からオマエを救ってくれる、唯一の武器かも知れねぇぞ??”
俺の武器は勉強しかないと思ってた。
実際そんなに勉強も嫌いじゃないし、成績だって悪くない。
普通の人が歩む
普通の人生
それが俺の生きる道だと思ってたけど、月原は俺にもう一つの道を示してくれた。
誰にもマネできない、俺だけの道
その道がいかに過酷なものか、どれだけ修羅の道なのかはわからないけれど……どうせ守る物なんて最初っから何にもない俺なんだから。失うものも守る物も何もないなら、可能性に賭けてみてもいいんじゃないかな。
失敗したらしたで、変わらない。
いつも通りのどん底の生活が待ってる。それだけだ。