あの日、あの夜、プールサイドで
本当の親はいない。
だけどここには最高の母親である静枝さんと、たくさんの保護者である先生たち。それに、かけがえのない兄弟がココにはいる。
そりゃあさ??
運動会とか親子遠足とか。
お母さんやお父さんと一緒にお弁当を食べているクラスメイトを羨ましく思わなかったか、って聞かれたらウソになるけど……
俺の家は光の子愛児園で
俺の母親は静枝さん。
それはとても誇らしいことだったし
なにも悲しいことじゃない。
昔の俺はこんな境遇の自分をこう思ってた。
“幸せはここから育てていけばいい”
お金がなくても
地位がなくても
本当の家族がいなくても
静枝さんが笑ってて
愛児園のみんなが笑ってくれたらそれでいい。
俺はこの小さな幸せから
少しずつ幸せを大きくしていけばいい。
人にはみんな幸せになる権利があるんだから――……
あの頃の俺は一片の迷いもなく
心の底からそう信じて疑わなかった。
そう。
あの事件が起こるまでは………ね。