あの日、あの夜、プールサイドで


新聞配達して、部活??
そんなハードな生活を夏休みに送るのか??



新聞配達って遅くても朝の3時起きだろ??そっから自転車でセカセカ働いて、朝飯食ったらすぐ部活??


そんで夕方まで泳ぎまくって、愛児園に帰ってきて飯食って、風呂入って、勉強して寝て、また三時起き??それがエンドレスで続く31日間。




うわ……
壮絶……
そんな一か月を過ごすのか!!?



想像しただけで吐き気がする。
どんな修行僧にも勝る、その苦行。



正直どっちかに決めてしまいたい。
新聞配達か、部活か。
どっちかに決めてしまったほうが絶対楽だ。



だけど……
ジュンの言った一言は月原に言われた言葉と丸々かぶる。





“金も経験も何もかも
全部欲しがったっていいと俺は思う。”





俺は人よりもハンデがある。
金もなければ親もない。


コネも権力も何もない俺がのし上がっていくためには、人よりも数倍努力しないとダメだ。きっとダメだ。


それだけは、すっごくわかる。




――は~、俺ってば苦労性だな~。




人よりも頑張らなきゃいけない生き方を定められてるなんて、神様はなんてイジワルで不公平だろう、と心底思う。



だけど…さ??
それに気づいたら新聞配達も部活も勉強も、全部頑張ってみてもいいのかもしれないって思えた。


全部を手に入れるために。


俺が一番欲しい
喉から手が出る程欲しい
“当たり前の幸せ”を手に入れるために、今をがむしゃらに生きてみてもいいのかもしれない。



素直に……そう思えたんだ。



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