あの日、あの夜、プールサイドで


寧々に小さなリュックをしょわせて
俺と真彩と川の字になって二人で寧々の手をつなぐ。


春の空気で満たされた田舎道を歩いていると


「あ、ちょうちょ!」

「あ!お花~!!」


寧々は道端に生えている花や、木々に止まっている虫に興味津々。



5歩歩けば寄り道して
3歩歩けば寄り道するからなかなか前に進まない。





それでも寧々を叱らずに寧々のペースで歩いていると、なんとかかんとか俺の中学に着くことができて


「寧々、こっち。」


俺は寧々と真彩をグラウンドの隣にあるプールに誘導する。




ウチのプールは真彩が中1だったころに建て替えたとかで、まだできて5年程しかたっていない比較的きれいなプール。


50Mレーンが6つある標準の中学用のプールだ。





プールに近づけば近づくほど


パシャン、パシャン
ピチャン、ピチャン


と、水の音が強くなる。






――うわ…
この気候で、水の中に入ってるわけ!!?



5月とはいえまだまだ肌寒い気温
水の中はもっと冷たいだろうに、水泳部のやつらはもう練習を始めているらしい。




マゾだ
絶対アイツらマゾだろ……




ちょっとげんなりしながら3人で歩んでいると



「あ、プールだ~!!」



寧々が歓声の声を上げる。



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