あの日、あの夜、プールサイドで


ふと視線を上にあげると、見上げた先にいるのは


「ストローク気をつけて!
もっとカラダ伸ばせ!!」


ホイッスルを口にくわえながら、部員たちを叱咤激励する謎の暗黒教師・月原和也の姿。




――うげ、いたよ…




俺に葛藤を生んだ張本人
月原の姿を見て一気にブルーに入る俺。



「ねぇ、コウちゃん。
気温も上がりきってないのに水の中なんて入って大丈夫なの??」



この異常な光景を見て、心配になった真彩の呟きに気づいた月原。その声を聴いた瞬間、アイツは視線を俺たちにスルッと流す。




う、見つかった!!




寧々の手を引いてギョッと身を固くした俺の姿を見つけると



「来たな、強欲少年。」



そう言って月原は意地悪くニヤリと笑う。





「ま、とりあえずこっち来いよ。
水着とかキャップにゴーグルは俺のお古を貸してやるから。」





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