あの日、あの夜、プールサイドで


えー?
また泳ぐの!?
もういいじゃん、平泳ぎ!!



「ま、次は俺も隣で並走してやっから。
一緒に泳ごうぜ。」




ニヤリと笑って俺の肩を叩く月原。
そんな悪徳教師を見てハァ~とため息を吐いて


「結果は結局同じだと思うけど?」


嫌味を込めて呟くと


「そう思ってるのは多分お前だけだよ。」


月原は大胆不敵にそう微笑んだ。





息を大きく吸って水の中に潜り込み、壁を大きく蹴って俺はもう一度スタートする。


全部一緒じゃなくて…


プル

キック

ストリーム……


頭の中で整理しながら発狂しそうになりながら、水の中を泳いで行く。でも考えながら行くもんだからあんまりうまく体が前に進まない。




――だぁ~!腹立つ!!




イライラしながら前に前に進んでいると



「いいぞ、吉良!
タイミングはいいからキックの時カカトをまっすぐにして押してみろ!!いいか!蹴るんじゃなくて押してみろ!!」



隣で並走する月原が嬉しそうに何かを叫ぶ。





はぁ?
蹴るんじゃなくて押す??
何言ってんだ、コイツ!!



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