あの日、あの夜、プールサイドで
クロールも楽しかったけど、平泳ぎのほうが断然楽しい。どんどん変わっていく自分の泳ぎが面白い。
1本目とは全く違うスピードで2本目を泳ぎ終えた後
「すっげー!!
オマエ今のままでも地区大会予選は余裕で勝てるぞ??」
「…え??」
「吉良!ダイヤモンドだ!!
オマエの平泳ぎはキラッキラのダイヤモンドが隠された、でっかいでっかい原石だぜ!!?」
月原は嬉しそうに笑いながら俺の肩をバシンと叩く。
ダイヤモンド……
その言葉に胸が震える。
「すごいよ、吉良君!!
平泳ぎって難しいのに…よくあれだけ泳げるね!!」
「え!?
初めて泳いだの!!?凄すぎ!!」
「すっげー!すっげーよ、オマエ!!!」
そして泳ぎ終えた俺の近くにわらわらと水泳部の部員が集まって、俺のカラダをバシバシ叩き始める。
気持ちよかった。
想像以上に水の中が気持ちよかった。