あの日、あの夜、プールサイドで
優しい、優しい、静江さん。
誰よりも柔らかで、誰よりもいい匂いのする静枝さん。
俺を生んでくれたわけじゃないけど、俺の母親はどうあったってこの人だ。この人以外にありえない。
大切で大切な静枝さん。
そんな彼女に抱きしめられていると、どこかホッとして緊張が緩んで
「寧々…大丈夫だよね??」
俺は思わずそんな言葉を口にしてしまう。
不安に駆られて、今にも泣きだしそうな俺を見つめると
「…大丈夫。
彼女はあなたの妹でしょう??
全力で守りましょう、二人で一緒に。」
静枝さんはニッコリ笑って俺を抱き寄せる。
そのぬくもり、その匂いに包まれながら
俺は、必死に祈った。
抱きしめられて
ホッとして
何より温かな気持ちに包まれながら、俺は目を閉じて神に祈った。
神様……
見たことも感じたこともない、この世界の神様。
どうか寧々を守ってください。
俺の大切な妹なんです。
誰よりかわいい、俺の妹なんです。
俺は…いいです。
俺の幸せ、これからの幸せ、全部全部アイツにわけてあげてもいいから、どうか寧々を守ってください。
願わくば、寧々が誰より幸せになれますように。
誰よりも一等幸せになれますように。
お願いです。
どうか寧々を守ってください――……
あの子は
俺のかわいいかわいい、妹なんです。