あの日、あの夜、プールサイドで


俺より2つ年上
12歳の彼女の名前は向坂真彩(サキサカ マアヤ)


真彩の両親は事故死。
預けられていたただ一人の肉親である祖母が亡くなり、8歳の頃にこの愛児園にやってきた。



「寧々のヤツ、プリン食いたいって言って泣くんだよ~!!」



ギャン泣きする寧々にげんなりしながら、真彩にそう答えると



「あらら。それは困った。
寧々ちゃん、プリン食べたいの??」



クスクス笑いながら、彼女は寧々にそっと近づく。



「た、たべたいの。
ねね、ぷりんたべたいのーっ!!」


自分の欲求を通すために、相変わらずギャン泣きを続ける寧々の前に膝立ちになって、そっと目線を合わすと



「でも今食べちゃうと、夜ご飯の後のデザートがなくなっちゃうよ??」


「…え??」


「おいしーいご飯の後の美味しいデザートが一番素敵な組み合わせでしょ??今食べちゃうと寧々ちゃんの食後のデザートなくなっちゃうよ??」



真彩はニッコリ笑いながら、寧々を諭す。





そして一瞬考え込んだ寧々の手のひらの上に小さなキャンディーをポンと置くと


「だから今はこのプリンキャンデーでがーまーんっ。」


そう言って真彩はニッコリと寧々に笑いかける。



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