あの日、あの夜、プールサイドで
――ムカツク、ムカつく、ムカつく!!
寧々を傷つけた両親もムカつくけど
アイツを守ってやれなかった自分に一番腹がたつ。
もっと早く気付いてやれば、寧々は怖い思いをしなかったのに。
もっと早く助けてやれば、あんなにひどい傷を付けなくてもよかったかもしれないのに。
「寧々…ゴメン……。」
俺は自分の拳ににじむ血を見ながら
今度こそ心に誓った。
寧々を絶対守って見せる。
もうアイツらには渡さない。
その決意はどうやら静枝さんも同じだったようで、彼女はすぐに保護司と児童相談所に連絡を入れ寧々を光の子愛児園で保護する手続きを取ってくれた。
父親はどうだか知らないが、母親は
「寧々をよろしくお願いします」
と静枝さんに頭を下げたらしい。
そんな詫び一つで寧々の傷が癒えるわけでもなく、何かが解決するわけでもない。
静枝さんからその報告を受けたとき
「そんなことぐらい、誰でもできる。」
そう言って、寧々の母親の行動をぴしゃりと責めたけれど
「光太郎。
寧々ちゃんのお母さまも人間なのよ。
間違うこともあれば、迷うこともある。
寧々ちゃんにした仕打ちは許せるものではないけれど…寧々ちゃんを想う気持ちに嘘はなかったのだと思いますよ?」
そう言って静枝さんは俺の肩に手を回して、俺をギュッと抱きしめる。