あの日、あの夜、プールサイドで
◇天使と悪魔
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寧々を光の子愛児園で保護してから1か月。
季節はいつの間にかセミが鬱陶しく鳴き続ける8月となり、夏特有の青臭い空気が湿気と共に辺りを包む。
寧々のカラダにあった紫色のアザはきれいさっぱりなくなった。
高い太陽
刺す日差し
「コウ兄ちゃん!!」
「うわっ!冷たい!!
やったな、寧々ー!!」
寧々は少しずつ、少しずつだけれど、あの頃の笑顔を取り戻しつつある。
何か悲しみを含んでいるさみしい笑顔じゃなく、俺の大好きな屈託のない向日葵みたいな笑顔がそこにある。
「光太郎の側がやっぱり一番落ち着くのね。」
「…え??」
「寧々ちゃんにとって、光太郎。あなたはきっと天使なんですよ。」
俺の近くで遊ぶ寧々
幸せそうな笑顔を向けて、俺の胸に飛び込んでくる寧々を見て、静枝さんは嬉しそうにそう微笑む。
俺が天使?
静枝さんの言葉が照れくさくてお尻がむずがゆくなる。
でも…さ?
そうだったらいいな。って思う自分がいるのも本当。
俺の近くで
俺の存在が寧々の傷ついた心と体を癒してくれるなら、そんな嬉しいことはない。
俺の天使
俺のカワイイ妹
かけがえのない、俺の寧々
目の前で無邪気に笑うカノジョが、ずっと幸せでいてくれますように。
俺は神様に強く祈った。