あの日、あの夜、プールサイドで


そして8月になると水泳部の練習が過酷を極めつつあった。


なんでって??


7月にあった全中の地区予選で俺は見事平泳ぎ50Mと100Mで規定タイムを楽々で突破して、8月中旬に行われる全国大会に出場することになったからだ。



全中の公式名称は
全国中学校水泳競技大会



地区予選で連盟の定めた規定タイム以上の記録が出れば、全国大会に進むことができる。



「すっげーなー、キラ!!」


「…へ??」


「オマエ、地区予選のタイムだけで行けば100Mは全国6位なんだぞ!!」



6月から始めた競泳
もちろん遊ぶ暇もなく真剣に取り組んではいたけれど、正直そこまで自分に自信はなかった。




水泳部顧問の月原和也の言いなりになって泳いで、直して、泳いで、直して、の繰り返し。



地区予選だって必死に泳いでただけで、どうやって泳いだのかも覚えてない。



だけど…さ??
一応、地区大会ではぶっちぎりの優勝を決め、次のコマに進むことができた。



嬉しかった。
こんな小さなこの手でも、掴める栄光があるんだと知った時、俺は初めて生きる意味を見いだせた気がしたんだ。



努力は自分を裏切らない。
そんな単純なことがうれしくて、俺はますます競泳にのめり込んでいた。



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