あの日、あの夜、プールサイドで



その日は8月の中でも特に暑い日だった。



水の中にいるのに熱射病になるぐらい日差しがキツくて、バテバテになりながら泳いでいたのを覚えてる。



「もっとシャープに!
カラダの芯をぶらすな!!!」



全国大会を1週間後に控え、月原の指導も熱を帯びて一層厳しくなっていた。





泳げば泳ぐほど
直せば直すほどグングン前に進むカラダ



この調子でいけば月原の言う“藤堂響弥”とも戦えるかもしれない。



前回の全中で中1ながらに優勝を決めた、チャンピオン。



あらゆる大会のタイトルを物にし、圧倒的な強さを誇る藤堂響弥はあの頃の俺の目標であり、俺の憧れそのものだった。




高い運動能力
そして理想的な体つき
シャープで無駄のない、その泳ぎ



どこにも隙のないアイツの泳ぎは、俺にとって理想そのもの。



あんな風に泳げるようになりたい。
アイツに肩を並べたい。


アイツと一緒に泳いでみたい――……


あの頃の俺はいつもそう思ってた。



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