あの日、あの夜、プールサイドで


――寧々がいない…??


その言葉を聞いて
体中の血という血が凍りつく。



イヤな予感がする…
とてつもなく嫌な予感がする…!!




目の前に巻き起こっていることが信じられなくて、何も考えられなくて、ただ茫然と立ち尽くしていると


「わ、私が水筒忘れちゃって、愛児園に取りに帰って、玄関で寧々ちゃんに待っててもらってたんだけど、水筒持って戻ってきたら、寧々ちゃん、どこにもいなくて……!!!!」



ヒクヒクと嗚咽を上げながら、真彩は俺に状況を伝える。



「い、いま、園長先生やみんなで探してる。だけど…だけど…寧々ちゃんいないの!どこにもいないの……!!!!」




寧々…


『寧々、コウ兄ちゃんだーいすき!!』


『行ってらっしゃい、コウ兄ちゃん!!』



今日、出かけるときはあんなに笑顔だったのに。




なんでいないんだ?寧々。
どこに行っちゃったんだよ、寧々!!





人間って混乱しすぎると、固まっちゃうんだってあの時初めて知った。





目の前で泣き叫ぶ、真彩



早く探しに行かなきゃ。
そう思っているのに一向に動かないカラダ。


思考も停止して
呆然としながら身動き一つ
瞬き一つできずに固まっていると




「オイ、キラ。
何ボーっとしてんだよ。」


怖い顔した月原が俺の頭をパシンと叩く。


「…え…??」


状況がうまく把握できなくて固まってると


「早く探しに行ってやれ!!
オマエの大事な妹だろうが!!!」


月原は真剣に怒り狂いながら、プールの出口を指さす。




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