家庭*恋*師
「これ、全部厳守だから。一つでも破ったら、その締まりのない頭坊主にするからね」

こんな小柄な少女から出てくるのが不思議なくらい、ドスの利いた声。皓太朗は、置かれたその用紙に目をやり、また溜息をつきたくなる。

一、平日は門限20時、就寝23時
二、就寝までにその日の復習と次の日の授業の予習を終わらせる
三、土曜日は補習授業のため外出禁止。授業のない日は10時までに起床し課題を始めること
四、テストを控えた日には範囲内のテキストを全て復習、また南の課す追加問題をすべて解くこと
五、実力テストの毎、南により定められた順位内に入ること
六、その他状況によりこれらの条件が追加される

追加される、と書かれた六が一番怖いのでは…そんなことを考えながら、手の中にあるこの薄っぺらい紙をぐちゃぐちゃに潰してしまいたい衝動にかられるが、それをすればまた色々とうるさいのだろうというのは理解できる。

なので自分に出来るのは、冗談まじりの抗議くらいだ。

「坊主って…南ちゃん、これはちょっとキツイんじゃねーの?門限8時って中坊かよオレは」
「こんな乱れた私生活のくせして何口走ってんの?」

だが、それも切り捨てられてしまう。名前で呼んで、少し甘い声で言ってみたものの、彼女には通用しないようだ。

「今年初めての実力テストは来週の数学。それで、50位以内に入ってもらうから」
「50位!?オレの去年の成績知ってて言ってる!?」
「こんなの去年の復習レベルでしょ。トップで卒業させるのなら、50位でも低いくらいだっつの。あんたに頑張ってもらわないと、私が困るの!」
「んなこと勝手に言われても…」

…女子と同室、というこの状況に、一時でも甘い期待をした自分が憎らしい。

美味しい思いをするのも、きっとさっきの目の保養が最初で最後だろう。そう考えながら、まだ説教を続ける彼女の裸を想像することで夜を乗り切ることにした。
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