家庭*恋*師
ふと口にについた言葉をすぐさま後悔する。

別にお世辞を言うつもりではなかった。だが、長時間机に向かっていた疲れからか、率直な意見が出てしまったのだ。

ふわふわの長い髪、華奢な体、そして整った顔立ち。どれをとっても、この厳しい家庭教師は皓太朗から見れば、可愛い同世代の女の子なのだ。

だが、そんな軟派な物言いにまた怒鳴られるのだろうと思うと、自然と身じろいでしまう。

「なっ…」

しかしその反応は、思いもよらないもの。

眉間に寄せたシワはそのままだが、彼女の顔は驚くほど素直に、みるみるうちに真っ赤になる。

初めて会った日、脱衣所で見たあの表情だ。

「バッ、バカなこと言ってないで!ほら、問二!」

それを隠すように自分から目をそらし、教科書を叩きつける。

さきほど、問題を解きたくないと言って駄々をこねた際に怒られた時と全く同じ動作なのに、今回は怖いどころかただの照れ隠しだというのは歴然で、可愛らしくも思えた。

そして同時に、要領のいい頭はすぐにそれが意味すること理解する。

それは一言で言ってしまえば、攻略法。もっとシンプルにいえば、扱い方。

あまりにもフランクに接してくるから気づかなかったが、この頭の堅い優等生は、異性からの女の子としての扱いにこれほどまでも反応を示すのだ。
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