家庭*恋*師
まるで、もう一度見れば変わってしまうかのように、何度も目を凝らせて見てみるも、結果は同じ。

35位。その順位は、去年の復習のようなこのテストでも、あの結果重視の父親に知らせても恥ずかしくないものだ。

確かに南との授業を楽しんでいたといっても、それは悪ふざけ半分。それでここまでやれるとは、自分でも思っていなかった。

驚きを隠せないまま南の方を見ると、彼女も目を見張っていて、自分の目を信じられないといった様子。この結果は、つまり彼女自身が承知したあの条件をクリアしたことを意味し、それに絶望しているのだろうと悟る。少し罪悪感さえ覚えた。

あの褒美のことは、別にいい。そう言おうとした、その瞬間。

「すごいっ、すごいよ出雲!35位だって!!ほら、35位ッ!」

自分の袖を掴み、その結果を見るように諭す。その瞳はキラキラしていて、心からそれを喜んでいるようだ。

「あ…うん」
「何その気の抜けた反応!やれば出来んじゃん!」

別にいい。そう言ってやりたかった。

だが、彼女があまり無防備に笑うから。

「なんだ、これなら20位以内、って言っておけばよかった!」

こんなにも嬉しそうに。

まるで自分のことのように。

かき立てられるのは。罪悪感などといった優しい感情ではなく、ドス黒いもの。こんなにも、他人のことで喜べる彼女を、壊したくなった。

自分の袖を掴んでいる小さな手首を掴み、少し乱暴にそれを引けば、彼女の身体は容易に前に倒れる。

前身を屈め、敏感だと知っている耳元に熱い吐息と共に忠告にも似た言葉を落とした。

これで、彼女が逃げてくれれば、どんなにいいことか。

「…つまり今夜は、南ちゃんはオレの好きにされるってことだよね」

顔を見ずとも、耳まで一気に紅潮した様子を見れば、きっとあの欲情を奮起させる表情をしているのだろう。

手を離し、一歩離れれば案の定、全校生徒の前で見せるには色めきすぎるのではないかというほど目を潤ませている彼女の顔。

「楽しみにしてるよ」

ここまで順位を引き上げてくれた礼ではなく、呟いたのはそんな言葉だけだった。
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