家庭*恋*師
「なに、とうとう頭トチ狂った?男子校なら私の着てるこの制服はなんなの。カズ、生徒会長かなんかしらないけど、自分の学校が共学ってことも知らないんだ」

鼻で人をあざ笑うかのようにそう言い捨てると、南もまた立ち上がる。カズは大きくためいきをつき、彼女に向かい合った。

「てめーには理解力もねーのか。女生徒が1割にも満たない学校なんて、男子校だろ」
「違いますー、遠山さんにもらったこのパンフレットにも、ちゃーんと共学って書いてあるしー。それに私、昔から男の子との方が馬が合うしー」
「それとこれとは別問題だ!うちは全寮制だぞ!?女子寮はいっぱいで、てめーの入るとこはねーんだって!」

そう、それが問題なのである。

少し過保護がすぎる、男子校のような場所に仮にも女の子である幼馴染を‥という心配もあるが、何よりも彼女の入る余地がない。

特別転入枠の受験、というほど、この学校にはそうそう転入生は入って来れない。なので、前年の受験合格者から逆算して女寮のスペースを確保したため、今現在南の入るべき部屋がないのが現実だ。

「ねぇ豪兄ちゃん!カズがイジメるー‥」
「え?あ、あははは‥いかんぞカズ」
「てめぇ!」

豪が、昔ながらの呼び名である「豪兄ちゃん」と呼ばれるのに弱いということを知っての作戦。それは見え見えの策略なのだが、豪はすっかりいい気分になってしまっているようである。
< 5 / 35 >

この作品をシェア

pagetop