家庭*恋*師
「部屋ならあるじゃん。あの旧校舎を改築した特別寮」

騒いでいる三人のボリュームに合わそうとしない、ぼそっとした秀のつぶやきは、やけに部屋に響いた。

それもそのはず、その一言は三人三様の激しい反応を誘ったのだ。

豪は青ざめ、カズは怒りに満ち、そして南は希望に目をキラキラとさせ、全員が秀に一斉に詰め寄る。

「なになに秀ちゃん、その特别寮って!南おねーちゃんにもっと詳しく言ってごらん!」
「てめぇ秀なに考えてんだ!あんなとこに南が入れるワケねーだろ!」
「っつかあの寮のことは内緒だって言ったよね俺!?」

慌てた様子のカズと豪を見て、南は顔をまるで般若のように歪め二人の方へと向く。

「なに?三人で私を仲間はずれにしておんなじ高校に入ったあとは、更に嘘ついて私を入れないつもり?」
「いやいや、そーじゃなくて‥」
「じゃあ、この特別寮っての詳しく話せ!」

すっかり手のつけようもないほどにエキサイトしている南に、さすがのカズも降参したのか、おおきくため息をついて豪の方を見る。彼も同意するように、深く頷き、カズに話すように諭した。

「…この学校の敷地がバカでかいのはお前も知ってるだろ?裏庭をこえたとこに、明治時代からある旧校舎が建ってるんだ。構造が不安定で今改築中。近いうち新しい寮として開放すっけど、今は一般生徒は入ってない」
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