家庭*恋*師
「なに、天井落ちてきそうだからあぶないって?別にそんなの気にしないけど」
「いや気にしろよ。そーじゃなくて…一応粗方の工事は終わってっから、使える部屋はあるんだ」
「じゃあ、そこに!」
「話は最後まで聞け」

カズの妙にもったいぶった口ぶりに、苛立ちを顕にする南。そんな彼女を見て再度ため息をついては、説明を続ける。

「『一般生徒は』っつったけど、特別寮を希望した生徒が一人だけ居る。お前、出雲家って知ってるか?」

南はふるふる、と否定を示すように頭を振る。まるで小学生が九九を聞かれわからない、と答えるような子供っぽい仕草に苦笑が漏れる。

「お前な、仮にも幼馴染の家のことだぞ?」
「いーから続けてよ!トロバカヅキ!」
「この学校を一代で名門校にした、旧華族。遠山さんのとおい親戚にあたる家だ」

思ってもみなかったその答えに、南は目を丸くした。

そういえば豪の家は、古くからの木造の家で、よく敷地内で走り回っていたが離れと母屋、蔵まであるかなりの大きなものだ。自分の母親も、前理事長が他界し、一端の教師だった豪が若くしてこの学校の理事長に任命された時に何か家のことを言っていたような気もする。

「え、遠山さんとこって、もしかしてすごいの!?」
「いやぁ、それほどでも…」
「それほどでもねーだろ実際」

すっかりいい気になっている豪をたしなめるような、カズの一言。

「遠山さんとこはいわゆる分家。っつっても一応一族扱いだから、ここで教師をしてたし、理事長になったってわけ」
「へぇー。んで、その出雲家がなんだって?」
「本家の跡取り息子が、その特別寮に入ってる生徒なんだよ」
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