家庭*恋*師
カズは豪の本棚にまるで自分の所有物のように近寄り、生徒のファイルを取り出す。南の前で開かれた生徒記録に載った顔写真と名前。
そこに記された名前は、出雲皓太朗(いずも こうたろう)といった。
学年は南と同じ2年生。生徒手帳などに載る顔写真はだいたい写真うつりが悪くなるのはお約束だが、彼は一段とやる気のない顔をしている。ふわふわとした猫っ毛は伸びに伸び、放置された荒地を思わせる。顔立ち自体はそんなに悪くないのだろうが、とろんとしたタレ目に生気が見当たらない。
旧華族の跡取り、というにはあまりにお粗末な外見だ。
「…なんか、見るからに凡楽っつーか、デキの悪い跡取り、ってやつ?家が創立者の学校に受験もなしで入ったみたいな?」
「一応うちの受験はちゃんと受けて合格したんだが…そのあとが問題なんだよ。授業にはロクにでない、挙句の果てには中間と期末までサボりやがった」
「うわー…どうやって進級したの、こいつ」
南の質問に、大げさな咳をする豪。そこは、まさに南がさきほど言ったような、大人の事情があるようだ。それを理解し、呆れたように腕を組んでソファにもたれかける。
「出雲家としては、うちをトップの成績で卒業したっつー華々しいハッピーエンドを期待してるらしーんだが、こっちはお手上げでね。勉強させようとルームメイトに金つんだりしてみたけど失敗。しかも女は部屋に連れ込むわ、外出許可なしで泊まりにでるわ…あんまりうるさく注意されっから、今年からは一般生徒の立ち寄れない特別寮に入れろだの駄々こねやがって」
「へぇー…遠山さんも大変だね。どーせ理事会からこいつのこと、ガミガミ言われるんでしょ?」
「そーなんだよ…ホント出雲くんには困ってるんだ…」
そこに記された名前は、出雲皓太朗(いずも こうたろう)といった。
学年は南と同じ2年生。生徒手帳などに載る顔写真はだいたい写真うつりが悪くなるのはお約束だが、彼は一段とやる気のない顔をしている。ふわふわとした猫っ毛は伸びに伸び、放置された荒地を思わせる。顔立ち自体はそんなに悪くないのだろうが、とろんとしたタレ目に生気が見当たらない。
旧華族の跡取り、というにはあまりにお粗末な外見だ。
「…なんか、見るからに凡楽っつーか、デキの悪い跡取り、ってやつ?家が創立者の学校に受験もなしで入ったみたいな?」
「一応うちの受験はちゃんと受けて合格したんだが…そのあとが問題なんだよ。授業にはロクにでない、挙句の果てには中間と期末までサボりやがった」
「うわー…どうやって進級したの、こいつ」
南の質問に、大げさな咳をする豪。そこは、まさに南がさきほど言ったような、大人の事情があるようだ。それを理解し、呆れたように腕を組んでソファにもたれかける。
「出雲家としては、うちをトップの成績で卒業したっつー華々しいハッピーエンドを期待してるらしーんだが、こっちはお手上げでね。勉強させようとルームメイトに金つんだりしてみたけど失敗。しかも女は部屋に連れ込むわ、外出許可なしで泊まりにでるわ…あんまりうるさく注意されっから、今年からは一般生徒の立ち寄れない特別寮に入れろだの駄々こねやがって」
「へぇー…遠山さんも大変だね。どーせ理事会からこいつのこと、ガミガミ言われるんでしょ?」
「そーなんだよ…ホント出雲くんには困ってるんだ…」