家庭*恋*師
生徒会長と理事長のタッグでも、進級させるのがやっとなこの生徒。つまり、トップどころか3年生になるのも危ういというのが現実なのだろう。南は再度、そのやる気のない顔を見つめた。写真の相手はこっちを見る気もないように、ただぼんやりとしている。

そして、そんな顔を見ていて、ひらめいたことが一つ。

「っつーことで、こっちはこの問題児で手がいっぱいで、お前が入る余裕なんて…」
「わかった!」

何も頼まれていないのに、合意で声を荒げる南。何が起こったのかと、その場の三人はきょとん、とした顔になる。

「私、やっぱりその寮に入る!」
「お前は人の話を聞いてねーのか」
「違って!ただ入るんじゃなくて、そいつのルームメイトとして家庭教師する!私が、この問題児をトップで卒業させてみる!」

予想だにしていなかったその宣言。あまりの勢いと自信に、全員言葉を失った。

「…ほ、本とか南!?やってくれるか!」
「うん 、任せて遠山さん!」

最初に沈黙をやぶったのは、豪。見た目によらず、よほどストレスをためていたのだろう、目に涙を浮かべんばかりの勢いで南の手をとる。

一方南はすっかりヒーロー気分で目を輝かせ、どこから来るのかわからない自信に満ちていた。

「そういえば南は家庭教師のバイトもしてたしな!勉強できるだけじゃなくて教えるのうまいんだよな!」
「おう!全教科なんでもござれ、D判定からの合格率は80%!相手は別にバカじゃなくてやる気ないだけなんだから、楽勝!」
「よっ、ガリ勉。さすが青春を勉強に費やしただけあるなー」

秀の要らない茶々も加え、一同は大いに盛り上がった。
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