小さな主人と二人の従者
 甘く優しい道と苦しくてたまらない茨道。
 ジュリアの頭の中で天秤のように揺れていた。

「どっち?」
「私は・・・・・・」

 カーシーに操られたように問いかけに答える。

「茨道を選ぶ」

 カーシーは瞬き一つせず、ジュリアの答えを聞いた。

「理由を聞かせてくれる?」
「優しい道は魅力があるけれど、いつまでもそこに浸ってしまいそうなの。そんなことをしてしまったら、自分はもっと何もできなくなってしまう。茨道を選んだのは痛みや苦しみを味わいながら、必死にそれにぶつかりたい」
「そう選択をして君は壊れたんだね」

 その言葉にジュリアは強い衝撃を受けた。
 今のジュリアは壊れた自分のことを完全に忘れている。ミラベルもセリーナ先生も安心したように微笑んでいた。

「壊れた・・・・・・?」
「どうしてそんな顔をしているの?君のことだよ?」

 何も言えないジュリアの顔を見るためにカーシーは顎を指先で持ち上げる。

「どういうことだろうね?壊れた君が急に元気な顔を見せるようになって、周囲もかなり驚いているんだよ」
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