小さな主人と二人の従者
 ジュリアはカーシーが何を考えているのか、それから何を言ってくるのか予想できなくて、待っている時間が長く感じた。

「できることなら俺のことを思い出してほしくないな」
「それは私があなたを怒ったことを言っているの?」

 すると、カーシーの手がビクッと動いた。

「ミラベルから聞いたの。年下の女の子に手を出して弄ぶことを」
「あのね、女の子が嫌がるなら止めるから。いや、そうじゃなくて、ジュリアに言われてから一度もしていないよ」
「そうなの?」
「何その顔。本当だからね」

 そうやって軽口を叩くから、記憶喪失前のジュリアに警戒されたのではないのだろうか。

「カーシー、私に夢を見せようとしたこともあるんだよね?」
「話を変えたね。まぁ、いいか。君に夢を見せようとしたのは本当だよ」
「どんな夢を見せようとしたの?」

 カーシーはジュリアの肩を押してベッドに寝かせると、手でジュリアの目を覆った。
 何も言わないで夢を見せようとするので、恐怖を感じて首を横に振った。

「カーシー、やめて!」
「怖がらなくて良いよ。君に怖い夢を見せない」
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