小さな主人と二人の従者
 何だか眠った状態で記憶の欠片に触れたようだった。

「どうだった?」
「あの、誰かに会うことができたけど、姿が見えなかった」
「ずっと眠らせる訳にはいかない。今日はこれでおしまい」

 子どもに絵本を読み聞かせた親のように終了した。

「次はもう少し長く見せることができると思うよ」
「今晩は駄目なの?」
「そんなお誘いされるともっと甘い夢を見せたくなるよ」

 カーシーの甘い夢とジュリアの甘い夢は考え方が違うだろう。それでも引き下がろうとしないジュリアにやんわりと説得する。

「俺ももっと君と二人でいたいよ。ただ、時間が時間だから。それに・・・・・・」

 そっとジュリアの耳元まで唇を近づけた。

「君の近くにいる男達に見つかっても嫌でしょ?俺が怒られるんだよ?勝手に連れ回したから」

 男達とはギャレットとケネスのこと。これ以上ここにいて次の授業にいなかったら、不自然に感じるだろう。

「もう行かなきゃね。本、また後で読むことにしよう」

 外へ出ようとしたときにカーシーはジュリアに約束を守らせることにした。

「ジュリア、ここに隠し部屋があることを誰にも言ったら駄目だよ?また夢を見たくなったときに俺と一緒にここに来よう?」
「うん。ギャレット達に見られないようにね」

 カーシーが快く頷いてくれて、ジュリアは素直に喜んだ。
< 110 / 269 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop