小さな主人と二人の従者
侵入
 ジュリアとミラベルは教室へ向かいながら授業について話をしていた。

「変身魔法学は難しいね」
「そうね。私は何度も失敗してしまったわ」

 変身魔法学はコツを掴むまで時間がかかり、習得することが難しい科目。

「ケネスやギャレットは私達の年のときはどうだったんだろうね」
「さ、さあ?」

 ちなみにケネスは魔法薬学専攻でギャレットは幻想生物学専攻。

「ミラベル、ちゃんと持ってきた?」
「もちろんよ。ほら」

 小さな手提げ鞄の中からローズヒップジャムを出した。昨日、ミラベルと勉強をしているときにこれを一緒に使うことを約束していた。今の時間は厨房へ入ることができるので、ぬいぐるみの妖精たちに会うためにも自然と急ぎ足になる。

「そんなに急いでどこへ行くの?」
「セリーナ先生!」

 数冊分厚い資料を片手で抱えているセリーナ先生が階段を上ってきた。

「今からこのジャムを使うために厨房へ行くんです。先生もどうですか?」

 すると、セリーナ先生はふんわりと笑った。

「素敵ね。少しだけご一緒させてもらうわね」
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