小さな主人と二人の従者
　教室の前を通ったときにケイティとルースに呼び止められた。

「なあ、さっき魔獣が入った話は本当なのか！？」
「本当だよ。ギャレットがすぐに倒した」
「お見事でした」

　ルースは談話室にいて、ケイティは厨房の向かいの廊下で見ていたらしい。

「小さな魔獣が入ってくることはたまにあるけど、あんな凶暴な魔獣が現れたのは初めてよね？」

　ジュリアは頷いてから窓の外を見ると、黒猫がジュリア達を見下ろしている。ジュリアと目が合うと、木の枝から別の木の枝に飛び移りながら、どこかへ去った。

「どうかしたのか？ジュリア」

　ケネスが隣に立って、窓の外を見た。

「ううん、何でもないの」

　ジュリアはあの黒猫をどこかで見たことがあると考えていた。自分の飼い猫でないことは間違いないのに、それでも何度も接したことがあるようで、あの黒猫も記憶の欠片の一部かもしれなかった。

「今、何か言ったか？」

　ルースの質問に全員が首を横に振った。

「そうか？動物達が話でもしていたのか？」
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