小さな主人と二人の従者
「やっぱり無理だよね。ジュリアには何の力もない、一人では何もできない子だ」

 ジュリアは俯いて、声を殺しながら涙を流した。悔し涙だった。

「本当に泣き虫だよね。ジュリアの泣き顔も好きだから、俺を喜ばせるだけだよ?」

 滅多に見ることのない嘲るような笑みにジュリアは怒りの炎が大きくなった。

「もういい!どっかへ行って!ギャレットなんか知らない!!」

 記憶を思い出したのはここまでで、カーシーに名前を呼ばれた。

「また思い出した」
「だろうね。嫌な記憶だったみたいだね」

 記憶の中の自分のように本当に涙を流していた。止めようとしても、涙は止まらず、カーシーに背を向けると、後ろからジュリアを膝に乗せて、包むように抱きしめられた。

「カーシー、何をしているの?」
「甘えているんだよ」
「何それ?」

 その返事にジュリアは小さく笑った。

「ジュースがあるよ。飲む?」
「ううん、喉が渇いていないからいいよ」
「よっぽど嫌なことだったんだね。ずっと俺の手を濡らしている」

 カーシーの手はジュリアが落とす涙で濡れていた。

「ご、ごめん!離れる!」
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