小さな主人と二人の従者
 思い出しても、何本も糸が絡まっていて、解くにはまだ時間が必要だった。
 彼女はギャレットのことを知っていた。話を聞いたところ、親しみがあるように聞こえた。ギャレットは何もかも知っているのかもしれない。

「思い出した。でも、まだ何かがあるの。絶対に」

 咲き誇る花のように美しい女性や姿が見えなかった謎の男、それからギャレット。ジュリアとどんな関わりを持っていたのか、必ず記憶を取り戻そうとジュリアは強い想いを胸に秘めた。
 時間になってカーシーと別れる前に呼び止められて、スプレーをかけられた。

「何?」
「これね、香りを消すことができるんだよ。やっておかないと後が怖いからね」

 カーシーから詳しく話を聞くと、前にこの部屋から出て行ったときに学校の廊下で会ったギャレットにジュリアの香りがすることを指摘されて、怪しまれたらしい。そのときは偶然を装って、適当な嘘を考えたらしく、何とか免れたことができたようだった。

「久々にあの黄金色を見せられたからびっくりしたよ」

 感情的になると、瞳の色が変わる。吸血鬼である特徴。ギャレットとケネスと一緒に行動するようになってから、それは一度も見ていない。怖がらせないように配慮してくれているのだろう。

「私も見たことがあるからわかるよ」

 魔族であるジュリアも見た目を変えることができる。
 だけど、ジュリアにとって今の色が一番落ち着くので、しばらくこのままでいる。

「今日はゆっくり休みなよ。ジュリア」

 ジュリアは返事をしてお礼を言ってから、静かに隠し部屋を出た。
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